鋳造巣についての話

鋳物の町 埼玉県川口市のアルミ鋳造工場

<<アルミ鋳造技術コラム>>


鋳造巣

 巣(ス)は鋳物の代表的な欠陥です。鋳物製品の仕入れ等に関わる機会があれば巣という言葉を聞いたことのある方は多いと思います。

 鋳造工法にかかわらず巣は発生します。外観上巣とは製品内部、または外側に発生した欠損部分(空洞)の事をいいます。しかし、外観が同じであってもその発生要因は多種多様であり、その種類の特定を誤れば対策は大きく異なって、欠陥を防止することはできず、逆に欠陥の増大をまねくこともあります。たとえば、外見上は内部巣でも、「ひけ巣」か「ガス欠陥」か「介在物巻き込み」かで、その対応は大きく異なります。こういった巣の発生原因、対策のプロセスは外観のみでは無く鋳型の作り、材質、注湯状況などから判断するしかないため、ベテラン技術者の経験が必要不可欠となります。


・ひけ巣
金属の液体から固体に凝固した際の体積変化(約6%の体積収縮)により生じる欠損。主に肉厚部、セキ付近にできる。内部ヒケ巣となった場合セキ付近のものはザク巣と呼ばれるいびつな複雑形状で発生する可能性が高い。基本的に最終凝固部分に発生する。

・ガス欠陥
溶解アルミニウム内に存在していた水素ガス、中子、塗型、鋳型から発生するガス、鋳型内に存在していたガスが抜け切らずに残ったまま凝固してしまったもの。溶湯内のガスの場合、製品内部にピンホールとして発生する可能性が高く、製品外観も肌が荒れた状態となる。全体的に製品内部に発生した場合は球状もしくは滑らかな状態で発生する場合が多い。基本的にガスは比重が軽いため凝固時の製品上部にできる。

・介在物巻き込み
型内の砂、剥がれた塗型、中子砂、アルミ片などが製品内部に取り込まれたもの。異物の混入後がそのまま欠陥形状となる。しかし、カスと呼ばれる溶湯の乱流から生じた型内空気の巻き込みの場合、非常に欠陥部分は小さくなり外観上は判別不能で耐圧検査によって欠陥が判明することとなる。