アルミ鋳造の基礎知識 鋳造方法の紹介

鋳物の町 埼玉県川口市のアルミ鋳造工場

<<アルミ鋳造技術コラム>>


アルミ鋳造の基礎知識 鋳造方法の紹介

 鋳造とは、金属を融点よりも高い温度で熱して液体にしたあと、型に流し込み、冷やして目的の形状に固める加工方法です。古代から砂型を使用して金属貨幣や、なべ釜等の調理器具、斧、鎌等農具の生産に広く用いられてきました。

 近年でも複雑な形状でも製造できる汎用性は他の工法と比べても非常に優秀で、様々な製品の素形材として利用されており、金型により高精度の鋳物も開発されています。

 以下に代表的な鋳造法とその特徴を説明します。

■砂型鋳造法 生砂型鋳造法
※当社で採用しています
 最も古くから用いられている工法で、原型となる型から砂で反転型を取る鋳造法。反転型となる砂にはケイ砂など熱膨張率が少なく通気性のより砂が用いられる。適度に粘土を出すために水を含ませる必要がある。砂は脆く欠けなど生じやすいため、型込めをする作業者により品質が左右される。木型は安価で、砂は特殊な処理無しで再生利用可能なため立上費用が最も安い工法となる。
自硬性鋳型鋳造法  生砂型鋳造法の砂にフラン樹脂やフェノール樹脂、ウレタン樹脂等の常温自硬性有機粘結剤を混ぜて硬化させる。硬化した砂は注湯した際の温度変化で崩壊する。一度使用した砂を再利用するには砂処理設備の導入が必要。また砂の粒度を細かくすると通気性が下がりふかれの原因となるため、ある程度荒い砂しか使用できず鋳肌、寸法精度は下がる。
ガス硬化型鋳造法
※当社で採用しています
 自硬性鋳型鋳造法と類似している点が多い。砂に高アルカリ性フェノール樹脂(コールドボックス法)、ポリイソシアネートなどの粘結材を混ぜ、ガス(エステル、CO2)と反応させることで硬化させる。自硬性と違い反応が早く砂の流動性も良い。反面、粘欠材が高価であるという欠点がある。
Vプロセス鋳造法  特殊なフィルムの間に砂を挟み込み減圧する事で反転型を硬化させる工法。鋳肌が滑らかにできあがるのが特徴。フィルムの成形に限界があるため複雑形状の製品には向かない。
■金型鋳造法 重力鋳造法(グラビティー)
※当社で採用しています
 金型に溶湯重力の圧力のみで注湯していく工法。型内のガスもゆっくりと外に抜けていき、注湯は自然に型内に充填されていくため、内部品質(耐圧性、巣の少ない)の良い製品ができる。また、内部に極端な圧力がかからないため中子の使用が可能で複雑な形状の製品、厚肉の製品も鋳造可能である。金型もダイカストと比較すると安価である。欠点として寸法精度はダイカストに劣り、製品の歩留まりは鋳造法案に大きく左右される。
高圧鋳造法(ダイカスト)  アルミの金型鋳造の代名詞となっている鋳造法。鋳型内に高圧高速で溶湯を注入して製造を行う。寸法精度が高く、薄肉部にも湯がよくまわる。大量生産に最も適した工法である。金型には圧力に耐える強度、密封性が必要となり、複雑な形状は金型シリンダーで抜く必要があるため型費は高額となる。高速高圧で溶湯を注入するため内部のガスを巻き込みやすい。製品表面は金型によって急冷されきれいだが、内部には巣やガスの残りによる空間ができているため耐圧には弱く、溶接、アルマイト、熱処理等の後処理を行う事は難しい。厚肉、大型鋳物の製造は困難である。小型薄肉の製品の大量生産に向いている。
低圧鋳造法  金型内に溶湯を低圧で注入していく工法。ガス欠陥の少ない鋳物ができ厚肉鋳物に向いている。また、製品歩留まりも高い。型費は若干高価で生産効率はダイカストと比べ悪いため製品単価も若干高価となる。
ロストワックス鋳造  製品と同じ形状をロウ(ワックス)で生産しこれに耐火物(セラミックなど)のコーティングをする。これを加熱するとロウは比較的低温で燃焼し消失する。この空間に溶湯を流し込み製品を生産する工法。ロウ種を作るのに金型が必要となる。小物の大量生産に向いている。
生砂型鋳造法 砂型鋳造法 > 生砂型鋳造法

 左の一番上の写真が生砂型鋳造法用の木型です。近年では木型と言っても基本的に材料としては樹脂が使用されています。節や木目の無いことで製作時の精度も向上しますし、経年劣化の乾燥によるソリや割れ、腐りやカビなども少ないためです。
 木型の右から生えているホースはバイブレーターで型込め後、抜型の際に振動を与えて型を引き抜きやすくします。木型から生えている棒のようなものが湯口や押し湯、あがりです。生砂の工法では方案の自由度が非常に高く、方案上の問題が起こった際にも型の修正が簡単にできます。

 真ん中の写真は木型に金枠を被せ、砂を入れ始めた状態です。砂は当社独自の配合で型の転写性が良好でガス抜けも良い砂を使っています。この状態からさらに砂を充填してゆき金枠の上で擦り切ります。木型の入り組んでいる部分に空間が空かないようにしっかりと砂を充填する必要があります。あまりつき固めを強めると砂と砂との隙間がなくなりガス抜けが悪くなります。また固めが足りないと抜型時に砂が崩れたり、注湯をした際に砂がくずれる(すくわれ)の原因となるので適当な硬さにつき固める必要があります。

 一番下の写真は完成した上型です。白く見えるのは木型についていた離型材が砂にくっついたためです。この後下型を同様に込めて金枠のガイドにピンを刺しこれを使用しハグミの無いように上下を合わせて砂型の完成となります。
 この砂は注湯後、水分を含ませることで再度利用する事が可能です。数ある鋳造法の中でも最も化学物質を使用しない原始的な工法で、そのため環境には非常にやさしい工法です。

 作業者の習熟を必要とするため、この工法ができる人材が減っていて、近年では大部分が自硬性やガス硬化型などのあまり習熟度を必要としない工法にとって変わられています。
ガス硬化型鋳造法 砂型鋳造法 > ガス硬化型鋳造法

 一番上の写真がガス硬化型鋳造法用の木型で、基本的には自硬性用の型としても使用する事が可能です。型の外周に沿って木枠が作られているのが見えると思います。生砂の場合は砂の硬度が足りないため注湯時まで外周を保護する必要があるので金枠が使用されますが、ガス硬化型の場合、硬化した砂はかなりの強度を持つので枠は型と一体になっている場合が多いです。

 真ん中の写真では砂を充填した後でCO2ガスを砂の内部に注入しています。砂に混ぜた粘結材とCO2が反応し数秒から1分程度で固化します。当社では粘結材として水溶性アルカリフェノール樹脂を使用していますのでアミンコールドボックス、自硬性の工法などと比べると臭いがあまりなく環境への配慮をしております。
 
 一番下の写真は完成した砂型です。写真で見えるとおり自立しています。さらに型内にシャフトを通していますのでこのシャフトをクレーンで吊り下げて上下型を合わせます。生砂の場合は金枠のガイドを使用して上下型を合わせますがガス型の場合は砂型にあるダボで上下の合わせを行います。この状態ではかなりの強度をもつガス型ですが、この後、注湯すると高温となり粘結材が崩壊しサラの砂に戻ります。
重力鋳造法(グラビティー) 金型鋳造法 > 重力鋳造法(グラビティー)

 最上部の写真がグラビティー鋳造用の金型です。表面が白く色の変わっている部分が塗型を塗っている部分です。弊社では何種類かの塗型材を使用して温度勾配の調整、つまり溶湯が金型内に流れ込んだ際の固化する部位の順序を調整しています。アルミニウムの融点が660℃付近なのに対して金型の温度は250℃〜300℃程度です。金型の方が400℃以上も低温なので溶湯は金型に触れた瞬間に急激に冷却されて固化していきます。塗型材の種類、膜圧の調整によってこの冷却の速度を製品の部位によって調整して内部品質のよい鋳物を製造するのが当社の技術です。金型上部についているのはシリンダーの入子です。型割で表現できない形状の時グラビティーではシェル中子などの砂の中子を使用する事も可能です。ですが、この型の場合は量産性を追求するためにダイキャストと同様シリンダーによる入子を採用しています。

 2番目の写真は注湯の様子です。坩堝炉から溶湯をとりべを使用して汲み、金型の湯受け部に流し込んでいます。この際、溶湯の温度低下を防ぐためできるだけ迅速に湯受けに注湯する事が大切です。

 3番目の写真は金型を加傾している途中の状態です。金型が加傾していくことで湯受け内の溶湯が金型内に流れ込んでいきます。金型の場合、砂型と違い型の表面からガスは一切抜けていきません。ガスは湯が流れこんでいく際にそこから対向車のように出て行ったり、押出ピンの隙間、金型の開放部から抜けていきます。塗型にもガスを外に流れやすくする効果があります。グラビティー金型の場合にもガス欠陥は発生しやすいので金型作成時にガス抜けについてしっかり対策する事が重要です。完全に加傾が終わると溶湯は型内に完全に充填され、ゆっくりと固化していきます。

 一番下の写真は製品が固化した後の取り出しの様子です。金型に付いている押出ピンによってきれいに取り出されます。ワンサイクルにかかる時間はおよそ5分くらいで通常の8時間稼動で1日80〜100ショット程度の生産が可能です。